猫 から 怪電波

サブカル巡礼の手記。主に感想文。

映画『食人族』

 

池袋新文芸坐で『食人族』(1983年/ルッジェロ・デオダート/伊)を観てきた。

 

【あらすじ】
物語はグリーンインフェルノと呼ばれる密林地帯に原住民のドキュメンタリーを撮りに行った四人の若いクルーたちを、ニューヨーク大学の教授とその一行が捜索しに行くところから始まる。
教授一行はヤクモ族と接触しボディーランゲージや折りたたみナイフ(文明の譲渡?)で警戒を解き、なにかを発酵させて作ったような酒(白くてドロドロしており同行した軍人によると最高のもてなしらしいが、それを原住民が塗りたくるように食べている姿はかなりグロテスク……)、果てには人肉を口にするなどして信頼を得る。
その後消息不明だった四人の遺体を確認し、教授の機転でフィルムを持ち帰るが、そこにはフェイクドキュメンタリーのために暴虐の限りを尽くすクルーたちの記録が残されていた。
フィルムを公開するか否かで揉めていたテレビ局のお偉方もこの惨状を見て閉口し、終いには焼却を命ずるほどであるが、そのフィルムがどういうわけか流出して……というシロモノ。

 

食人こそフェイクなものの、作中の
○教授一行が大ネズミを屠殺する
○原住民が猿の脳をすする
○クルーたちが大きな亀を捌いて食べる
○原住民の食料である子豚を撃ち殺す

これらの描写はどうやら本物らしい。
これこそ時代がなせる技だと思う。がやはり亀のシーンが引っかかってイタリアで上映禁止になっていた。

 

ヤクモ族やらヤマモモ族やらその中でも木族と沼族で対立しているというらしいが、正直どっちが木族でどっちが沼族だかよくわからず(原住民は基本的に泥にまみれていたので)。

 

クルーたちは住民間の抗争を演出するため原住民を押し込めた家に火を放ったり、原住民の少女を陵辱する。

また自身では気づかなかったが他のサイトの感想考察によると

○毒蛇に咬まれたガイドの足を切断する(結局死ぬ)。
○「原住民は歳をとると自ら村を離れる」とワニに食われた老婆の死体を解説する。
○自分たちの陵辱した原住民の少女が串刺しになっているのを「原住民がこれほどまでに純潔を重んじるなんて……」と嘆く。

これらも全てクルーたちによる演出としている。
ガイドは咬まれた際に自分で「足を切ってくれ!」と言っているのでそうとは思わなかったが、原住民の老婆や少女に関しては、言われてみればそうなのかもしれない。
クルーたちが原住民の内情なんて知ってるはずがないし、まさかあれだけやりたい放題してからインタビューしてると思えない。
少女のときは切り替わった時点でもうすでに串刺しになっており誰がやったかはわからない。さらにカメラが回ってから「笑うな、もう撮ってる」と促されてから嘆いている。

 

どちらにせよもっとも野蛮なのは食人族ではなく。文明人たちの方だということは確かだろう。

 

調べてみるとエクスプロイテーションホラー映画の括りらしい。

 

○ハンディカムによる主観の撮影法(POV撮影法)
○上記した動物殺し
○クルーたちの作品の一つとして流される銃殺映像(作中ではヤラセ扱いだが本物のスナッフ、というよりは戦時中の虐殺記録?)


これらのリアルと食人というフェイクを混在させることによって作品全体に妙な臨場感を醸し出しており、監督ルッジェロ・デオダートの鬼才を感じた。